「自民、今は移民ではない」——。
政府は一貫して「移民政策は取らない」と説明しています。たしかに公式には、日本は“移民国家”ではないとされています。しかし現実を見ると、外国人労働者は増え続け、「特定技能」や「育成就労」といった制度は拡大し、永住や家族帯同の道も広がっています。
それでも本当に「移民ではない」と言い切れるのでしょうか。
一部では、日本はすでに“事実上の移民国家”になりつつあるとの指摘もあります。さらに、在留外国人の割合が10%を超える自治体が現れ始める中、「民族置換」という強い言葉まで飛び交うようになりました。
もちろん、労働力不足という現実は深刻です。少子高齢化が進む日本にとって、外国人材の受け入れは経済維持のための重要な選択肢でもあります。自民党も「違法外国人ゼロ」や制度の適正利用を掲げ、秩序ある受け入れを強調しています。
ですが——
「移民政策ではない」と言いながら、制度は拡張され続けている。この“言葉と現実のズレ”こそ、多くの人が抱く違和感の正体ではないでしょうか。
2026年1月には、外国人政策の基本方針が取りまとめられる予定です。総量規制は導入されるのか。日本はどこまで外国人受け入れを広げるのか。
本記事では、「自民、今は移民ではない」という言葉の意味を丁寧に整理しながら、日本が本当に移民国家へ向かっているのか、そして「民族置換」の懸念は現実的なのかを、冷静に検証していきます。
感情論ではなく、事実と制度から考えてみましょう。
1. 「自民、今は移民ではない」という公式見解
1-1. 政府が繰り返す「移民政策は採らない」という説明
政府はこれまで一貫して、「日本は移民政策を実施していない」という立場を示してきました。
ここでいう“移民”とは、入国の時点で永住を前提とする人々を受け入れる政策を指す、と説明されています。
つまり、就労ビザや技能実習などの在留資格で来日する外国人は「移民」には当たらない、という整理です。
この線引きによって、日本は公式には「移民国家ではない」と位置付けられています。
1-2. なぜ「移民」という言葉を避けるのか
背景には、国民の間に根強い慎重論があることが挙げられます。
欧州で起きた社会的摩擦や治安問題の報道を見て、「日本も同じ道を歩むのではないか」と不安を抱く声は少なくありません。
そのため政府は、「外国人材の受け入れ」とは言っても、「移民受け入れ」という表現は使わない姿勢を保っています。
言葉の選び方そのものが、政治的な配慮の産物ともいえるでしょう。
2. しかし現実は?拡大する外国人受け入れの実態
2-1. 労働市場を支える外国人の増加
一方で現実を見ると、外国人労働者の数は年々増加しています。
少子高齢化が進み、働き手が減少する中、建設、介護、農業、製造業など多くの分野で外国人材への依存度が高まっています。
制度上は「期間限定の労働者」であっても、更新や資格変更を通じて長期滞在に至るケースは珍しくありません。
2-2. 「特定技能」と定着を促す仕組み
2019年に始まった新しい在留資格制度では、一定の技能を持つ外国人が複数年にわたり働けるようになりました。
分野によっては家族帯同も可能になり、生活基盤を日本に築く道が開かれています。
これは単なる“短期労働力”の補完とは言い切れない制度設計です。
2-3. 「育成就労」制度の意味
さらに新たな枠組みとして打ち出された制度では、外国人を育成し、日本社会に定着させることが明確に掲げられました。
これは従来の技能実習制度の問題点を修正する狙いがある一方で、長期滞在の流れを後押しする仕組みでもあります。
こうした制度の積み重ねが、「事実上の移民政策ではないか」と指摘される理由です。
3. 「移民政策ではない」が続く構造的理由
3-1. 少子高齢化という避けられない現実
日本の総人口は減少局面に入り、労働力人口も縮小しています。
医療・介護・インフラ維持など、社会を支える分野で人手不足は深刻です。
この穴を埋める手段として、外国人材の活用は現実的な選択肢となっています。
3-2. 経済界の強い要請
産業界は、安定的な人材確保を政府に求めています。
企業活動を維持するためには、一定規模の外国人受け入れが不可欠だという声は強まる一方です。
政治はその要望を無視できません。
3-3. それでも「移民国家」とは言わない理由
ただし、「日本は移民国家である」と宣言すれば、国民的議論は一気に激しくなるでしょう。
そのため、制度は拡張しつつも、言葉としては“移民”を避ける構図が続いています。
ここに、説明と実態のギャップが生まれています。
4. 「民族置換」とは何を意味するのか
4-1. 民族置換という概念
「民族置換」とは、ある地域で人口構成が大きく変わり、元来の住民の割合が相対的に低下していく現象を指す言葉です。
強い印象を与える表現ですが、背景には人口動態の変化があります。
4-2. 日本でも起きている人口構成の変化
実際に、外国籍住民の比率が1割を超える自治体も現れています。
これは直ちに“置き換わる”ことを意味するわけではありませんが、地域社会の姿が変わりつつあることは事実です。
4-3. 欧州諸国の経験
ヨーロッパでは移民増加に伴い、文化摩擦や社会統合の課題が顕在化しました。
日本も同様の問題に直面する可能性は否定できません。
重要なのは、同じ轍を踏むのか、それとも独自の仕組みを構築できるのか、という点です。
5. 自民党が掲げる抑制策は十分か
5-1. 不法滞在への対処
政府は、法令違反を許さない姿勢を強調しています。
在留管理の厳格化やデジタル認証の導入など、管理体制の強化を進めています。
5-2. 社会保障制度の適正化
公的給付や医療制度の不正利用を防ぐための審査強化も打ち出されています。
納税者の理解を得るためには、透明性の確保が不可欠です。
5-3. 土地取得や迷惑行為への対応
外国人による不動産取得や観光地でのトラブルに対する規制も議論されています。
秩序維持を前提とする受け入れが基本方針です。
しかし、管理強化だけで人口構成の変化そのものを抑えられるかは別問題です。
6. 2026年の外国人政策が分岐点になる
6-1. 基本方針の取りまとめ
近く、外国人政策の方向性が示される予定です。
ここで受け入れ規模の考え方が明確になる可能性があります。
6-2. 総量規制は導入されるのか
在留外国人の割合に上限を設けるという議論もあります。
もし総量の枠を設定すれば、「民族置換」への懸念は一定程度抑えられるかもしれません。
逆に、規模を明確にしないまま拡大が続けば、不安はさらに広がるでしょう。
7. 私たちは何を議論すべきか
「移民政策かどうか」という言葉の問題に終始するのではなく、
どの程度受け入れ、どのように社会統合を進め、どんな国家像を描くのか。
それを国民的に議論することが重要です。
8. まとめ|「今は移民ではない」の先にある選択
「自民、今は移民ではない」という説明は、形式上は正しいのかもしれません。
しかし制度の方向性を見ると、日本社会は確実に変化の途上にあります。
それを“移民国家化”と呼ぶかどうかは別として、
人口構成の変化、文化の多様化、社会統合の課題は避けられません。
危機感を抱くこと自体は自然なことです。
大切なのは、不安を煽ることではなく、現実を直視し、制度設計をどうするかを冷静に考えること。
2026年は、その議論の節目になるでしょう。