怪物くんの隠れた魅力を浮き彫りにするABC
時の鏡を手に入れた俺たちは怪物ランドに戻ろうとした。
はははっ。コイツ、ちょっとだけ俺に似てる。
だけど・・・翼をバタバタさせて地球🌏から
宇宙へ帰還しようとして・・・
見えない力に遮られて、なかなか出られずに
時間と体力を使ってしまった。
まさか、月の衣の呪いか・・・?
カズナリ「トモ・・・ごめんなさい」
白い羽が少しずつ落ちて行く。
俺はビックリしてカズナリを抱きしめた。
カズナリ「トモ。このまま、此処でお別れしよう」
力を失くしたのか、もう飛べなくなっていた。
トモナリ「馬鹿なことを言うな」
俺はカズナリを抱いて休めるところを探した。
ゆっくり旋回して安全なところを探した。
だけど地表近くまで下りると、鋭い光線が飛び交っていて・・・除けきれずに俺とカズナリは地球人に捕らえられてしまった。
二人、研究室に閉じ込められてしまった。
俺がSophia大学にいた頃よりもずっと後の時代だ。
幸い言葉は通じた。
トモナリ「私の伴侶は酷く弱っている。保護を願う」
博士「できる限りのことをしましょう」
トモナリ「ここは何処の施設ですか?」
博士「つくばにある宇宙センターです」
トモナリ「私と、私の伴侶を同室にしていただけますか?」
博士「はい。ただ・・・血液などを採取したいのですが、ご協力願えますか?」
トモナリ「私の血なら、いくらでも」
血をとる手が震えているのが分かった。
青の血だからだ。
カズナリの血はとらせたくなかった。
だけど、200ccだけ、という約束で持って行かれた。
カズナリの血は赤かった。
地球人達が騒いでいた。
俺はカズナリを誰にも触れさせたくなかった。
俺は、眠るカズナリの横で時の鏡を見た。
怪物くんと揶揄われるあの子が不憫だった。
力持ちで優しくて、だけど人と違う。
手も伸びるし、火も吹ける。
俺の一族に違いなかった。
🌼もえこさんの絵です💛
誰だ・・・?カズナリに生き写しだ。
優しい人だな。
文字や数字を教えてくれて
温かいご飯も作ってくれる。
そりゃ、好きになるだろう。
・・・だけど。
🌼もえこさんの絵です💛
パートナーがいる人を好きになったのか・・
・・・それは、切ないな・・・
この子は径ちゃんって呼ばれているんだな。
生い立ちは・・・
時の鏡で過去へと進んだ。
・・・・・。
・・・カズナリ・・・
目を覚ましたら、お前になんて言えばいい?
・・・カズナリ・・・生きろ。
俺の為に、生きてくれ・・・
俺は優しく手を握り、俺の力を送り続けた。
怪物くんでさわやかライフ
⭐️怪物星⭐️
嵐を司る神々が現れた。
ノエル「皆さま、お揃いになりました」
阿部「智さま。和さま。
先の大魔王さま。皇太后さま。
そして、お預かりしているお子さま。
我ら臣下代表、ノエル、真実の鏡よりトモナリさま、カズナリさまの現在を大画面でお届けいたします」
怪物城の大広間に、真実の鏡からのトモナリとカズナリの映像が映された。
天空の魔界から地球🌏へとワープしていた。
和「トモナリとカズナリさんのプライベートな映像は、省いてあげて頂けませんか?」
阿部「かしこまりました」
智「これは・・・蔵王の辺りか」
阿部「はい。奥羽山脈、山形県の辺りです」
大魔王「地球🌏は美しい星だな」
映像は続いた。
途中、カットされたシーンのすぐ後に
皇太后「おお!時の鏡ですよ」
智「よくやった!!」
だけど、地球から脱出できないトモナリとカズナリを目の当たりにして一同は悲しんだ。
和「トモナリ・・・カズナリさん」
大切な二人が囚われの身となった。
皇太后「嗚呼!地球人め、無礼な!」
トモナリが見つめる時の鏡を、怪物城の皆も共有していた。
🌼もえこさんの絵です💛
いつの間にか目を覚ました怪物くんも
一緒に見ていた。
育ててくれたお爺さんは優しい人だった。
爺「神の子よ、ゆっくりおやすみ」
お爺さんは、神の子と呼んだ。
お爺さんは大切に育ててくれたけれど、世間の人々は冷たかった。
ジャングルジムから落ちそうになったお友達を、手を伸ばして助けたのに・・・気持ち悪いと虐められた。
寒い冬に焚き火をして暖を取ろうとしていた人間が、なかなか火をつけられなくて困っていたから火を吹いてあげたのに、皆から石を投げられた。
怪物はあっち行けと虐められた。
お爺さんが亡くなって、途方に暮れていると、警察に保護された。
そこで榎本さんに出会った。
🌼もえこさんの絵です💛
戸籍も何もないけれど、榎本さんとそっくりだったから、引き取ってもらえた。
そこに、予備校講師の和さんがいた。
皇太后「おお!うちの和さんにもカズナリさんにもそっくりな方ね」
優しい人。初恋の人だった。
映像に向かって、手を伸ばしていた。
智「・・・伴侶のいる人を好きになってしまったのか・・・。お前のパートナーは、きっと現れるよ」
和「径ちゃん、おいで」
智と和は、怪物くんを受け入れていた。
孫かもしれないし、息子かもしれない。
どちらにしても、我が一族。
伸びる手に火を吹く能力。
そして、智にもトモナリにもそっくりで、血を分けた者に間違いなかった。
和「ひとりで、よく頑張りましたね」
径はどうしていいかわからなかったけれど、嬉しくて、はにかんだ。
笑うとひょこりと八重歯がのぞいた。
トモナリが時の鏡を、径が生まれたときに戻した。
パパ和とカズナリがいつしか休ませてもらった民家だ。
二人が飛び立ったすぐ後に、その親切な地球人のもとに、コウノトリが訪れた。
コウノトリ「ただ今、怪物星の和さまがこちらにいらっしゃった筈ですが」
爺「おお!やはりあの方々は神さまか。畏多いことだ」
お爺さんはひれ伏した。
コウノトリ「怪物星、智さまと和さまの第二子王子であられる。時が満ちるまで大切にお守りください」
コウノトリは赤子を置いて飛び去った。
第一王子はトモナリだ。
径は、トモナリの弟の王子である。
智「・・・私達の息子・・・」
径は両親と巡りあえていた。
既に両親の真ん中に座っていたのだ。
第二王子が誕生していたとの喜びの一方で
和「トモナリとカズナリさんを救出しなくては!」
怪物星ではトモナリ王夫妻の救出のために、知識人が集められ、緊急会議が開かれた。
全怪物星人が二人の為に祈りを捧げた。
そして、息子夫婦を救出するために
智と和が天空の魔界の門にのぞんだ。
智「径よ、私達に何かあったときには、お前が正統な後継者だ。阿部先生について、学問をせよ。父上、母上。径をお願いします」
紫の石と翡翠を首から下げ、桜の花である和を伴い、智は海の歌を詠んだ。
智「月の衣は我らにないが、そもそもの月の衣に付いた呪いは、我に起因する。私が和を傷付けた血だ。その呪いは、私が受けよう。天空の魔界の門よ、我らを通せ」
怪物星全土が揺れるほどの地響きと共に
嵐を司る神々が現れた。
嵐「待ってたよ。久しぶり」
神さま達は和かに笑っていた。