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金曜日の夜、日付が変わる頃に緊急入院になったチャンミン
彼の身体にも、彼のなかに宿っている新しい…
俺達のこどもにも、命に関わるような事態では無いと言われて胸を撫で下ろした
土日は俺が休みで、今はチャンミンも俺に合わせて土日には基本的に仕事を入れないようにしている
これは、俺達の我儘、では無くて、難しいと言われている男性オメガの妊娠出産が順調に進む為
チャンミンは、少なくとも安定期に入るまでは無理はしてはならないと言われているから、主治医と事務所と相談しながら無理の無い範囲でスケジュールを組んでいる
チャンミンは、悪阻も殆ど無ければ体調の変化もあまり無いのだと何時も話していた
何時も元気そうに見えたし、俺と…
お腹のこどもを大切にしているように思えていた
だから、当たり前のように俺は、このままこどもが生まれて、上手く行くんだって思っていた
チャンミンが個室に入院して二日、あっという間に日曜日の夕方がやって来た
俺は、特別に泊まっても良いと許可を貰ったから、この週末は予定通りチャンミンの傍で過ごす事が出来た
勿論、本来ならば俺の部屋で一緒にゆっくりと過ごせた筈だから、何だかまるで現実では無いような気もした
病院に泊まる事は許可された
けれども、二十四時間体制でチャンミンの傍に居る事は、今は止めて欲しいとオメガの専門医に言われてしまった
俺は彼の番、彼のおなかのなかに居るこどもの父親
そう言って、傍に居たかった
だけど、傍に居ても結局、俺はチャンミンの悩みや苦しみ、不安を何も分かっていなかった
「毎日会いに来るのは今はあまり…って言われちゃったから、なるべく我慢する
だけど、メッセージはしても良い?」
「ユノヒョン…せめて、扉まで送ります」
「駄目だよ、チャンミナは絶対安静なんだから
うん、そうだな…
多分、俺が居たらこうしてチャンミナが気を遣ったり無理をしてしまうから
だから、俺も今はひとりで頑張るよ」
一応、俺もこの土日を利用して
チャンミンが眠っている間や、隣の控え室で壁越しに近くに居て…
なんていうと我ながら女々しいけれども
つまりはこの病院に居る間、オメガ男性の妊娠について改めて調べた
色々なデータや文献、それに探せば探す程に憶測のような話もあるから、結局どれが正解なのか
より正しい情報なのかは分からなかった
でも、やはり分かった事は、オメガ男性は直腸の奥に子宮を持っている、とは言え、やはり女性とは違う
だからこそ、妊娠も出産も、簡単では無いという事
妊娠出来ても安定期と呼ばれるまで辿り着けずに…
という事も、女性よりは確率が高くなるらしい事
「お腹が張りやすくなってるから、チャンミナは何よりゆっくりリラックスして過ごす事が大事って言われただろ?
俺も、チャンミナが心配しなくて良いように、ちゃんと食事も摂るし…」
「エアコン…」
「あはは、そうだな
暑いからって部屋を冷やし過ぎないようにするよ」
ベッドから身体を起こそうとしたチャンミンは、けれども、俺が腕を伸ばさずとも、もう一度枕に頭をつけた
「本当は、扉まで見送りたいって思ってくれているのが分かるからそれだけで嬉しいよ」
「うん…」
「本当は、離れたく無いよ
だけど、チャンミナが此処で頑張ってくれるから俺も頑張るよ」
「僕は、ただこうして横になるだけなのに
ユノヒョンは身体を動かして、軍隊で…
だから僕が今は、ユノヒョンの戻ってくる場所を守りたかったのに」
「充分過ぎるくらいだよ
男なのに妊娠して、何もかも初めてなのにチャンミナはちゃんと、何があっても俺達のこどもを守ってくれている
それだけじゃあ無くて仕事までして…
だから、今後はもう少し…」
安心させる為に話していたのだけど、俺を見上げるチャンミンの目が不安に揺れている
「どうしたの?」
「今後は、僕が仕事をしないようにって…そうするんですか?
僕が役立たずだから…」
「違うよ
体調に合わせて仕事をして、それから…
何時、どうやって発表するか、もチャンミナに任せるんじゃあ無くて、俺も事務所としっかり話そうと思う
役立たずじゃ無いよ
俺をこんなにも幸せにしてくれるし、仕事だって…
誰も、チャンミナが妊娠しているだなんて思って無いんだよ」
腹が膨らんできた事で、以前の、当たり前に男である自分に戻れなくなるかもしれない
仕事が出来なくなるかもしれない
そう、不安を抱いていたチャンミン
それを俺は全く気付く事が出来ないまま、変化を恐れるチャンミンに、その変化を喜ばしく思って接して、触れていた
あまり、と言うか、今はチャンミンを刺激しないように、と医師からきつく言われている
だから、この土日も許される限りは傍に居たけれども、あまり触れないようにしていた
けど、今日はもう自宅マンションに帰って、明日からはまた訓練が待っている
毎日は会いに来ないように、と言われているから…
「最近のチャンミナは、頑張り過ぎていたくらいだよ
だから…」
『頑張らなくて良い』
と言おうとした
でも、自らを役立たず、なんて言うチャンミンに何もしなくて良いと言えば、更に思い詰めてしまいそうで…
「俺達のこどもの為に、今は兎に角動かない事
それを頑張って欲しい」
「…動かない事を頑張るなんて…」
「簡単だと思う?
俺には出来ないし、幾らチャンミナがインドア派でも、もう本当は…飽きたんじゃあ無いか?」
ベッドに手を掛けて、覗き込むようにして顔を見つめた
俺はと言えば訓練で肌が焼けてきた
でも、チャンミンは白いまま
病室に居ると、余計に白く見えてしまう
「飽きたし…それに、ユノヒョンの部屋に帰りたい」
「うん、俺も本当は連れて帰りたい
だけど、チャンミナの身体と、こどもの為に我慢する
俺の我慢は簡単だけど、こどもがお腹に居るチャンミンは大変だろうなと思うんだ
大変だけど、安静にしてゆっくりして」
病院にやって来て、入院する事になった直後、目を覚ましたチャンミンは自らを責めて俺に何度も謝った
腹が膨らんだ事で、以前の自分や仕事に戻れなくなったらと思うと怖かったのだと
俺はと言えば、チャンミンのそんな気持ちを何も気付いていなかったから、その事について謝った
チャンミンは、腹が痛んだ時に
『これでこどもに何かあればどうしよう』
そう思って怖くなったのだとも教えてくれた
調べてみれば、『普通』と言われているベータの女性でも、妊娠をするとホルモンのバランスが崩れたり…
勿論、体調や色々な事の変化によって不安定になりやすいのだと知った
チャンミンは男で、元ベータ
それなのに、お腹のなかのこどもを疎ましく思ったり、妊娠を後悔しているという事は無いと分かったから、俺はまた、彼の強さに惚れ直した
「安定期が来て、退院して、それから週末が来たら…
ユノヒョンに沢山触れたい」
「俺も、その日が待ち遠しい
だからふたりで頑張ろう」
「…はい」
チャンミンの額にキスをして、後ろ髪を引かれる想いで病室を出た
「俺は面会にも行ったら駄目だと言われて凹んだよ」
「マネージャー…
番の俺も、ずっと傍に居る事は禁止されていたんです
兎に角刺激しないように、チャンミナのストレスを減らすように、と」
「分かってるよ
医師と電話で話す事も出来たし、こうしてユノからもチャンミンの様子を聞けてほっとした
もしも、胎児に何かあれば…考えただけでぞっとするよ」
俺達の事を全て知ってくれているマネージャーは、会うなり俺の顔を見て息を深く吐いた
聞いたら、
『電話やメッセージでは大丈夫だと聞いてはいたけど、チャンミンを見ていないから不安だった』
らしく、俺の顔を見て、本当に大丈夫らしいと思ったそうだ
マネージャーは今、事務所と共に、チャンミンの直近のスケジュールについて調整をしているらしい
「その…仕事は大丈夫そうですか?
影響とか…
なんて、今は何も出来ない俺が言う事では無いですが」
「大丈夫、と笑顔では言えないな
ユノもチャンミンも、ふたりとも大切な我が事務所の人間だから
でも、オメガだと公表しているし、今に関しては、チャンミンの体調次第だと分かっていたから…
想定の範囲内、とは言えないけど大丈夫だ」
「…そうですか、良かった…」
マネージャーには、医師から、今回のお腹の張りが収まって、諸々の検索の結果、そして勿論…
チャンミンの精神的な状態次第だが、一週間から二週間程で、早ければ安定期と言えるだろうと言われた
チャンミンが腹を抱えて蹲り、短い時間ではあったけれども意識を失った時はどうしようかと思った
何も出来ない自分の無力さに打ちひしがれたし、俺がどう頑張ったって、もしも何かあった場合に…
大切なチャンミンとこどもを守る事すら出来ないのだと思うと恐ろしくなった
だから、絶対安静にして上手く行けば、だけど…
またチャンミンと穏やかに過ごせる日々が戻ってくると分かって嬉しかった
「多分、だけど…」
「何ですか?」
マネージャーの言葉に顔を上げた
日曜日の夜、外はもう真っ暗だ
明日からは…
いや、今夜からは、チャンミンと離れ離れの日常が始まる
「チャンミンは、妊娠した事を早く公表したいんじゃあないかと思うんだ」
「…彼がそう言っていたんですか?」
俺には、腹が膨らむ事を見て怖くなった
元の自分に、元の自分の居場所に戻る事が出来なくなりそうで、と話してくれた
マネージャーは首を横に振って
「彼は、俺達事務所の判断に任せると言っていたよ」
と言った
「事務所の判断…そうですね
俺にも、相談をして決めないといけないから、と話していました」
チャンミンの本音はまだ分からない
話したいけれども、チャンミンを刺激しないように、と言われているから
でも、認めてもらえるか、を恐れていた様子のチャンミンだから…
もしかしたら、早く公表して隠す事無く堂々といたかったのかもしれない、と思った
「難しいな
色々なタレントを見てきたけど、俺も事務所もこんな事は初めてだから」
「そうですよね…」
「これまで話している通り、公表はするつもりだ
だけど、安定期を迎えてからでは無いと、と思っている」
「はい、精神的なストレスにもなると思うのでそれが良いと思います
だけど…」
<
div>だけど、言えない事がまた、チャンミンのストレスになっていたのかもしれないと思った
そして、それを何も知らなかった事が悔しい
基礎訓練を終えて、日々の訓練に自宅から通えるようになった
俺のマンションにはチャンミンがやって来て、どれだけ疲れて帰ってもチャンミンの笑顔があるから頑張れた
『元気です』
『順調です』
と言う彼の言葉と笑顔に、その奥にあるものを何も見ようとしていなかったのかもしれない
「…ただいま」
なんて、土日にこの言葉と共に自宅マンションの扉を開ける事が最近は無かったから、既に寂しい
「チャンミナ、居る?寝てるかな?……なんて」
チャンミンの病室を出たのが、午後六時
マネージャーと事務所で話をして帰宅して、今は午後九時半
暗い廊下を進んでも、リビングにも寝室にも勿論誰も居ない
「…消灯…十時、だったよな?」
ふと思い出して、スマートフォンを取り出した
チャンミンは、メッセージや電話をして欲しい、と俺に言った
あまり沢山したら、それが見付かった時に医師に叱られてしまいそうだから我慢しないと、と思っている
だけど…
「……出なかったら直ぐに切るから…」
チャンミンの番号をタップして、電話を掛けた
俺が帰ってゆっくり眠っているかもしれないし、気付かないかもしれない
どきどししながら、耳に届く呼出音を聞いた
感じる訳なんて無いのに、この先がチャンミンに繋がるかもしれないと思ったら…
いや、彼を呼び出していると思ったら、俺が何よりも好きなチャンミンの匂いがするような気がした
「妊娠して少し薄くなったけど…それでも充分だよ」
思い出すだけで愛おしさが募る
だけど、呼出音は規則的に響くだけだから、もう諦めようとしたその時、ぷつりと音が止んだ
「…っ…」
『……ユノヒョン?』
「チャンミナ…」
情けない事に俺は
チャンミンの声を聞いただけで涙が溢れてしまった
身体にも、お腹のこどもにも
命に別状は無いと聞いているのに
いや、そうじゃ無い
「会いたかったよ、もう…」
『ユノヒョン、もしかして…
やっぱり、ユノヒョンは泣き虫ですね
だから、僕が傍に居なくちゃ…』
「うん…」
本当は、
『ひとりでも問題無い』
『寂しいけど、チャンミンの体調が第一だしこどもが大切
だから兎に角ゆっくり休んで』
と伝えるつもりだった
病室でも何度も伝えたのに
だけど、チャンミンの声を聞いたら想いが溢れて止まらなくなった
「チャンミナの居ない部屋は寂しいし、何だか寒いよ」
『それなら、エアコンを効かせすぎ無くて済むかもしれないですね』
「あはは、意地悪言わないでくれ
早く、またふたりで一緒に過ごしたい
それから…」
『それから?』
「ふたりで、一緒に
安定期を迎えたら、番である事と、妊娠を伝えよう」
『……ユノヒョン…』
「反発されるかもしれないし、オメガだって事を公表した時よりもファンが離れるかもしれない
だけど、また一から…
こどもが生まれて、俺が転役したら、また始めよう
俺もチャンミナも、堂々と過ごせるように…
だから、早く元気になって」
こんな本音、言えていなかった
やはり俺も公表する事には怖さがあったし、静かにしていたいという気持ちもあった
でも、チャンミンがスマートフォンの向こう側で静かに泣くその様子が分かったから、これで良いのだと思った
『…っふ……大人しくしなきゃいけないのに、だから耐えていたのに…
ユノヒョンの所為で泣いてしまいました』
「…っあ、ごめん!良くないよな
じゃあもう寝よう、俺も寝るから…」
『流石に早過ぎます
消灯しても、大人しく横になって起きています
だから、眠るまでメッセージで話がしたいです』
チャンミンの声は、ここ最近のなかで一番穏やかに聞こえた
何も、波風を立てずにいられたら勿論良いと思う
だけど、少し躓いた事で、また見える事がある
大丈夫、俺達が支え合っていれば前に進めるし…
「チャンミナが居てくれないと、俺の方が寂しくて眠れなくなりそうだ
だから、早く帰ってきて」
『…ゆっくり入院して、と言われるよりも、その方が嬉しいです』
離れていても、本音で言葉を交わせる
でも、早くまた、この部屋でチャンミンを抱き締めたい
ランキングに参加しています
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